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「アトリエか猫×島見美由紀 布と陶」@Galleria Tokuno-Shizuku

SNSが将来サービスを終了した場合等のことを考えて、記事はできるだけ自分のブログにも掲載するようにしよう。

・・・今日(2023年5月6日)は「アトリエか猫×島見美由紀 布と陶」を見にGalleria Tokuno-Shizuku@芦花公園に。
出窓やベランダが沢山ある素敵なマンションの一室で、溢れるほどの布作品と陶作品を堪能(会場での撮影会?の模様はこちら)。原点に帰ってすずなり柄のどらやきバッグをお持ち帰り。あまりたくさん荷物を入れるとせっかくのかたちが崩れそうだけど、財布と本を一、二冊くらいなら楽勝です。あと、ノートパソコンを入れている人がいると聞いたので試してみたけど、MacBook Airはすんなり入ってなかなかいい感じ。基本的に作りは丈夫なので問題なさそう。

帰りの途中、友人と美味しいスリランカ?カレーと紅茶をいただきながらいっぱい喋った。コロナ禍になってから恒常的に喋り不足なので、こういう機会はとても貴重。


【二篇参加】詩誌「蜜」5/21文学フリマ東京で発売

先日のライブでも予告しましたが、詩誌「蜜」が5/21文学フリマ東京36で発売されます。私は「周回遅れ」「どこでもない町」の二篇で参加しましたが、私なぞが名を連ねていていいのか?という感じの充実した内容で、めっちゃおすすめです。って、私もまだゲラをざっと見ただけなので、早くじっくり読みたい!

※以下は詩誌「蜜」編集部の告知ツイートから引用

詩誌 「蜜」【O-37 文フリ東京】

【お知らせ】

<詩誌 蜜 創刊号✨>
5/21 #文学フリマ にて発売します。

◎招待作品に文月悠光さん(@luna_yumi )をお迎えして、20名の方にご寄稿頂きました。

◇5月21日(日)12:00~17:00
東京流通センター(第一展示場)
蜜ブースは【O-37】です🍯

https://c.bunfree.net/c/tokyo36/h1/O/37

◎招待作品 文月悠光

服部真里子
村田活彦
小川芙由
四塚麻衣
坂田雅史
雨椎零
遠藤紘史
鹿嶋里
背川吐茅
前原徹也
水谷美雪
佐藤茂樹
谷原百合
渡邉清文
末野葉
田畑浩秋
山口守俊
鈴木美紀子
佐野真人
定行恭子
(掲載順/敬称略)

装画:鈴木琢未(@tamabi0207 )

#詩誌蜜


【詩】風葬

ウィキペディアで風葬を調べると、具体的な事例がいろいろあるわけですが、ここでは単に風に葬られるという意味だけで使っています。そんなのが許されるのかどうかは皆さんにご判断いただければ。

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風葬

真っ白に輝く遠い山並みは
青空の表面にハイライトを入れ
薄茶の砂はゆるやかなドレープを描き
群青の海は白いレースをまとう

この誰もいない海岸に
限りなく広がるうつくしい方角を
身体は魚眼レンズのように
溢れても溢れても取り込み続けた

冬の北国の海といえども
いつも灰色に塗りつぶされているわけではなく
まぶしい光の日には
裸の樹木や海食崖さえも
隠されたテクスチャーを露わにする

天気予報の悪戯のせいで
当てが外れてしまったけれども
握りしめた切符に導かれたならば
あとは静かに向き合えばよい

こんなにも透き通った海と空に
ただ眼を閉じて身体をゆだねれば
魂の最後のひとしずくまで希釈されて
悼む言葉もないまま風に葬られる


還暦÷3

ついでに20歳の頃のことを思い出しながら作った詩も載せてみる。

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軌道

この街の三月は春だから、夜の電車の窓に映り込んだまなざしは楕円の軌道を描いて合わせ鏡の奥へと遡っていく。限りなく遠い接点。やわらかな色彩の座標は季節はずれの服のように居場所をなくす。うち捨てられた旗はかわいた雪にゆれて、トラックのさびた残骸は化石のように凍りついている。そして無人駅の廃屋へと続く道が残されたただ一つのものだった。それでも明滅する言葉は幼いかたちのまま降り続けていて、ほんの少しだけぬくもりを帯びることがあったかもしれない。やがて冬の太陽が定刻の合図を送ると、鉄橋の下をゆるやかにうねる河から血の気が失せて、列車は送電線の鉄塔に導かれて地平線の彼方へと姿を消していく。取り残されたわたしの方角は大きな弧を描いて回帰し、どうしようもなく離れていく軌道から眺めているのが同じ闇なのかどうかもわからなくなってしまう。


還暦÷2

あと数日で誕生日。なんと還暦。
60歳。どうにもこうにも実感が湧かない。
30歳を2回生きたことになるなんて。いやはや。
ところで30歳の誕生日をどう過ごしたのか。全然覚えていないし日記とかつける習慣もないので記録もないけど。
その頃は、最初に就職した東京からUターン転職で札幌の実家に戻ってきていて、北海道内(札幌を除く)の商店街を出張して回るような仕事をしてました。
結局札幌にいたのは4年くらいで、また東京に転職して今日に至るのですが。

その頃のことを思い出しながら数年前に書いた詩なぞ。

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どこでもない町

音もなく波打つ灰色の海をまとって
車は霧雨の道を流刑のように走り続ける
睥睨する断崖を首をすくめてやり過ごすと
どこでもない町の一週間が始まる

そこでは埃の匂いのするソファに座り
郷土の名士の色褪せた肖像写真に囲まれて
にこやかに訳知り顔の世間話をしたり
黙々と渋面のキーボードを叩いたりする

昼下がりの岬を見晴るかす緩やかな斜面に立てば
ことばは白く輝く水平線の彼方から、
このきれいに生えそろった若草の芝生へと届くだろう
あらゆる世界から隔絶しているどこでもない町は
それでもなおあなたの引力圏にあり
たとえ途方もなく長大ではあっても
楕円軌道を描いているはずだったのだから

しかし、ことばは断崖の向こうで身もだえする海岸線に拘束され
海霧や横殴りの風に傷ついて
とぎれとぎれの雑音にかき消されてしまう
そしてわたしは海からも取り残される。

傾きかけた日差しが物憂げな頃になると
放課後の子供たちが遊ぶのが聞こえてくる
五時のチャイムが夕焼けに浸された町に漂うと
みんなそれぞれの家に帰っていく

わたしはどこの町に帰るのだろうか

次の週には塩まじりの冷たい風にまみれて
車はまばらな灌木の道を走り続けるだろう
まなざしが灰色の海霧に溶け出す方角には
どこでもない町がとりとめなく漂っているだろう