月別アーカイブ: 2006年5月

アナログプレーヤいじり その10~最低針圧を計ってみる


MJテクニカル・ディスク第3集解説(誠文堂新光社)でいろいろチェックして遊んでいます。

2枚目A面15-16トラックに「針圧調整用信号」というのが入っています。これは、少しずつ(例えば0.1gずつ)針圧を下げながら/上げながらかけてみて、歪み具合をチェックするというものです。音を聞いただけでもわかりますが、オシロスコープを使うとさらにはっきりとわかります。
で、手持ちの針を古いのから新しいのまで片っ端からチェックしてみました。全部グレースの製品です。
面白いなぁと思ったのは、 RS-8RCという20年以上前に買った針です。LEVEL IIというF-8系のカートリッジ用のもので、セラミック・カンチレバーというちょっと珍しい製品です。手持ちの2本をチェックしてみましたが、片方は1.1gまで大丈夫だったのに、もう片方は1.6gかけないと歪みます。さすがに長い年月が経つと個体差が表面化するということなんでしょうか。1.6gの方も、しばらく重めの針圧をかけて使えば、固くなっていたダンパーもそのうち軟化してくれたりしないのかな。
一方、最近買ったものはさすがに成績が良く、いずれも指定針圧より0.3-0.5グラムくらいまでは大丈夫でした。

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アナログプレーヤいじり その9~ピックアップの低域共振周波数を計ってみる その2

では、共振周波数はどのように決まるかです。

 昨日のエントリーで、ヨーヨーの場合、風船が重いほど、ゴムの強さが弱いほど共振周波数は低くなると書きました。これをピックアップに当てはめて考えてみると、
1.針先から見たピックアップ全体の質量(これを「実効質量」といいます)が重いほど共振周波数は低くなります。
2.針を支えるゴム(ダンパー)が弱いほど共振周波数は低くなります。ダンパーの強さは「コンプライアンス」という値で表現されますが、これは平たく言うと「グニャグニャ度」を表すもので、ダンパーが弱いほどグニャグニャ度すなわちコンプライアンスは大きくなります。
 で、計算式は以下の通りとなります。共振周波数はf0(単位はヘルツ)、実効質量はmt(グラム)、コンプライアンスはcb(100万分の1cm/dyne)です。

 では具体例で計算してみましょう。デノンDL-103というカートリッジをサエクWE-308というトーンアームに取り付けた場合の共振周波数を計算してみます。
 まず、コンプライアンスですが、デノンDL-103のスペックを見ると5(100万分の1cm/dyne)となっています。
 次に実効質量ですが、これはちょっとややこしい。「レコードとレコード・プレーヤ」に次のようなグラフが載っています。

 横軸の「ヘッド重量」というのは、カートリッジとヘッドシェルの重さを足したものです。DL-103の重さは8.5グラム、WE-308のヘッドシェルの重さは7.3グラムなので、足すと15.8グラムということになります。
 で、ヘッド重量が15.8グラムのときの実効質量をグラフから読み取ると、だいたい26.5グラムくらいでしょうか。
 これらの値を上の計算式に代入すると、共振周波数は約13.8Hzと算出されます。昨日のエントリーで紹介した望ましい共振周波数の値は10-15Hzですから、めでたしめでたし、ということになります。
 ・・・が、「レコードとレコード・プレーヤ」にはこんなグラフも載っています。

 一番上の曲線がピークに達しているところの周波数が共振周波数ですが、約8.5Hzと読み取れます。計算結果と全然違うやん!
 原因はよくわかりませんが(僕が何か思い違いをしている可能性はもちろん大いにあります)、上のグラフはいずれも実測データなので正確な値であると仮定すると、DL-103のコンプライアンスが公表値よりも高い可能性があります。
 試しに共振周波数を8.5Hzとしてコンプライアンスを計算してみたところ、13.2(100万分の1cm/dyne)となりました。「レコードとレコード・プレーヤ」にはDL-103をSME-3009S2というトーンアームに取り付けた場合のグラフも載っているので、試しにコンプライアンスを計算したら13.3(100万分の1cm/dyne)。なかなかよく一致しています。
 DL-103はコンプライアンスが低いカートリッジの代表格であり、ヘビー級のヘッドシェルやトーンアームに取り付けても共振周波数が下がりすぎる心配がない、という話を時折耳にしますが、もし実際のコンプライアンスが13.2~これは決して低い値ではないと思います~だとしたら、そうともいえないのではないか、という気がします。
 というわけで、共振周波数が適切な値になっているかどうかは、単に計算するだけでなく実測して確かめる必要があるのではないか、という気がしています。が、どうやって実測すればいいんだろ。だれか教えて下さい(現在試行錯誤中)。

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アナログプレーヤいじり その8~ピックアップの低域共振周波数を計ってみる その1

カートリッジとトーンアームの相性を考える上で、低域共振周波数(いわゆるアーム・レゾナンス)が最も重要な指標の一つと言われています。

 共振をわかりやすく説明するには、お祭りの縁日で売っているヨーヨー(?)が適当かと思います。ヨーヨーといっても、小さな風船に水をつめて輪ゴムと取り付けたやつのことです。
 指にヨーヨーの輪ゴムを引っかけて、風船をだらりとぶら下げた状態で、手を上下に動かしてみたらどうなるでしょうか。
1.ゆっくり動かすと、手の動きに従って風船も上下に動きます。ゴムは伸縮しません。
2.思いっきり速く動かすと、手だけが動いて風船はほとんど動きません。ゴムは手の動きに応じて伸縮します。
3.1と2の中間のスピードでは、手と風船の動きが逆になる(例えば手が上に動いているときに風船が下に動く)スピードがあります(ヨーヨーで遊ぶときはこのスピードかと思います)。ゴムは最も激しく伸縮します。これが共振で、このときのスピードが共振周波数ということになります。
 共振のスピードは、風船が重いほど、ゴムの強さが弱いほど遅くなります(共振周波数が低くなる)。これは感覚的にわかりますよね。
 で、同じことをピックアップについて考えると、針先がレコードの溝に従って振動します。針の根っこはダンパーと称するゴムを介してピックアップ本体(カートリッジ、ヘッドシェル、トーンアーム)につながっています。ということで、ヨーヨーと対比してみると、
ヨーヨー ピックアップ
・手     針
・ゴム   ダンパー
・風船   ピックアップ本体
ということになります。
 さて、カートリッジというのはカートリッジ本体から見た針先の相対的な動きを、コイルと磁石を使ってフレミングの法則によって電気信号に変換する装置です。では、針先の動きのスピードによって、出力される電気信号の大きさはどう変わるかというと、
1.遅いとき
 針先とカートリッジ本体は同じように動く(すなわち相対的な位置関係は変わらない)ので、電気信号は発生しません。
2.速いとき
 針先だけが動いてカートリッジ本体は静止しているので、針先の動きに応じた電気信号が発生します。
3.共振周波数
 針先とカートリッジが反対方向に動くので、相対的な動きは非常に大きくなり、発生する電気信号も非常に大きくなります。
 レコードに刻まれた信号を正確に再生するという見地から共振という現象を考えると、
1.過大な電気信号を発生する
2.針先とカートリッジの相対的な動きが過大になることにより、さまざまな歪みを発生する
という点で、いささか望ましくないものだと言えます。
 では、どういう対策を講じればよいかというと、
1.共振周波数で針先が振動しないようにする
2.共振の度合いを小さくする
といったことが考えられます。ここでは1について考えてみます。
 まず、レコードの溝には可聴周波数帯域(20Hz以上)の信号が刻まれているわけですから、共振周波数がそれよりも低くなるようにすればよいわけです。
 では、低ければ低いほど良いかというと、レコードにはソリや偏芯という問題があり、この周波数は数Hzくらいです。
 ということで、共振周波数はどのくらいに設定するのが望ましいとされているか、いくつかの資料をあたってみると、
・レコードプレーヤ(日本放送協会出版)・・・10Hz付近
・昔のラジオ技術の記事・・・10-15Hz
MJテクニカル・ディスク第3集解説(誠文堂新光社)・・・10-15Hz(10-13Hz)
などとなっています(つづく)。
【追記】
 「レコードとレコード・プレーヤ(ラジオ技術社)」には以下の記述があります。

・・・最近のカートリッジとアームの組み合わせでは5-7Hzくらいが多いのですが、レコードのソリや外来振動から見ると10Hzが適当・・・

 なんで「最近(70年代後半)のカートリッジとアームの組み合わせでは5-7Hzくらいが多い」のか、理由は色々あるでしょうが、私見では、カートリッジについてはいわゆるローマス・ハイコンプライアンス化が追求される一方で、トーンアームやヘッドシェルは高剛性化が追求された結果、ピックアップ全体の実効質量は大きくなる傾向にあったためではないか、と思います。
 そのような方向の追求が行われた背景としては、「ローマス・ハイコンプライアンス」とか「高剛性化」といったキャッチフレーズが市場で訴求力を持ってしまったために、メーカーとしては引っ込みがつかなくなった、という面もあったのではないでしょうか。
 さらに、それじゃぁさすがにまずいということで、ハイコンプライアンスのカートリッジに対応した軽量アームも並行して開発されたものの、それらは基本的にストレートパイプのヘッドシェル固定型だったために、ユニバーサルアームの人気が高い日本ではいまいち受けなかった、ということではなかったかなぁなんて思ってます。
「レコードとレコード・プレーヤ」にはこんな記述もあります。

・・・最近のカートリッジは全重量は軽量化されないのにコンプライアンスは大きくなる一方なので・・・

 なんか、「困ったもんだ」というニュアンスがにじみ出ているように感じられるのですが、思い過ごしでしょうか。
 「レコードとレコード・プレーヤ」を執筆したのはビクターの研究陣ですが、ビクターの一連のカートリッジ(当時はMC-1が最新作だったようです)のコンプライアンスがあまり高くない理由もそのあたりにあったのかもしれません。
・・・なんか脱線しまくってすっかり長くなってしまいました。

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