月別アーカイブ: 2011年8月

音楽制作関係の本をいくつか

11月頭頃をめどにCD作ったり配信の手配したりしようと思っていて、やらなきゃならんことはいっぱいあるのだけど、今日はどうも気が進まないので、最近その関係で読んだ本なぞ紹介。いわゆる逃避というやつですね。

宅録D.I.Y.ミュージック・ディスクガイド HOMEMADE MUSIC
古今東西の宅録テイストなディスクの紹介と、手作りな記事の数々。
最近つくづく感じるのだけど、Shaggsってすっかり広く知られるようになったなぁということ。あと、「初回限定生産500Ltd.時代のパッケージング(デザイナー編)」という座談会形式の記事が、手作り感炸裂のパッケージ写真の数々とともに面白かった。乾燥イカが入っているというのはどうかと思うけど(笑)。

デザインのひきだし12
面白いパッケージ作れないかなと考えてた折、六本木の青山ブックセンターで見かけてつい買ってしまった。「抜いたり貼ったり折ったり、紙の加工をもっと知る」という特集を自ら実践した、穴だらけの表紙に上部下部ともがたがたの作り。特に中のレーザーカットによる細密な切り抜きに感動し、自分のCDに採用できないものかと思って載っていた業者のサイトを見に行ってみたけど、やっぱ結構高いなー。

別冊カドカワ 総力特集 スガシカオ
この人がいなかったら自分は今こんなふうに音楽やってないよな、という人が何人かいるけど、スガシカオは間違いなくその一人ではあります。といいながら、ずいぶん長い間スガシカオの音楽からは離れていたのだけど。この本読んで、久々に聞いてみようかなという気になってます。個人的に面白かったのは巻頭インタビュー。

ファンクって本当はいい加減で、風呂なんかに入っちゃいけないんだよね(笑)(中略)俺みたいに事務所の言うことを聞いているヤツは、ファンクでも何でもない(中略)言ってしまえば、よそに子供を作っていない時点でダメ(笑)。思想で言ったら、俺なんか彼らから見れば、ファンキーでも何でもない、ただの幼稚園のチューリップ組ですよ。

そういう意味では、自分のボサノヴァも(思想的には?)チューリップ組のボサノヴァだと思うんですよね。で、スガシカオのチューリップ組ファンクがあれだけすばらしいことに勇気づけられるという(言うまでもないことですが、自分のいる「場所」のポテンシャル・可能性に勇気づけられるということであって、自分自身のポテンシャル・可能性は120%別の話)。
あと、ブログに連載されていた「PS.ヤグルトさんは元気です。」を読んでいて知ったのだけど、樺太育ちで69歳でガンで亡くなったというのはうちの父親と一緒でちょっとびっくり。炭鉱でも働いてたし。

プライベート・スタジオ作曲術 音楽が生まれる場所を訪ねて
いろんなアーティストのいろんな音楽部屋というか録音部屋を訪問し、音楽制作についてインタビューする本。すごく役に立つとも面白いとも思わないけど、なんか風呂とかにつかりながらぼーっと他人の部屋のたたずまいをながめてなごむ本という感じ。

さて、風呂でも入るか。


音楽制作に対する二つの態度

「・・・(トッド・ラングレンは)同じ曲を何度も何度もやり直すなんてありえないし、たいていは“間に合わせ”でOKしてしまう。少しくらい雑な演奏でも気にしないんだ。使いものにならないくらいひどくなければね。たぶんトッドはほんのちょっとしたミスを訂正するために、そのパート全体を差し替えるなんて愚の骨頂だと思っていたんだろう。だからアンディ(・パートリッジ)があるパートも“もっといい”ものに差し替えようとしても、トッドは彼をじっと見つめ、『アンディ、それでもっとよくなるとは限らないだろ--単に、違ってるだけかもしれないじゃないか』と言うだけだった」(トッド・ラングレンのスタジオ黄金狂時代

「僕(=山下達郎)が何のためにレコードを作り続けるかというと、純粋に作品をより良いものにしたいということだけなんですね。そして、なぜ音楽を売りたいかというと、アルバムの制作費を増やしたいから。(中略)当時は制作時間と予算が限られていて(中略)4~5人のリズム隊で1日2曲レコーディングするのが当たり前で、それほど緻密なアレンジは時間内にはなかなかできないんですよ。(中略)たとえば、4分半の曲を録った後に、“コーダに行く前にもう1小節あったらな”とか後で後悔しても、“もう一度録るなんて予算の問題で無理だ”ってスタッフに言われるのね。それで僕はレコードをもっと売ろうと思ったんです。トライ&エラーをするために。」(サウンド&レコーディング・マガジン2011.9 山下達郎インタビュー)


ARCで音場補正(追記あり)

2か月近くさぼってしまいました。とりあえず暑さのせいにしておこう。

さて、宅録でミックスなりマスタリングなりをする際に問題になるのがモニターです。
スピーカーや部屋により出音は大きく左右され、癖のある(高音やら低音やらが出すぎたり弱すぎたり等)環境でミックスすると得てして出来映えもおかしなものになってしまったりします。

ですが、宅録では自分が普段生活している部屋に個人の懐具合が許す範囲のグレードのスピーカーという、おそらく理想とはほど遠い環境で我慢せざるを得ません。< 適切なヘッドフォンでモニターすればその辺りの問題は気にせずに済みます。が、ヘッドフォンってスピーカーではわからないような細かい音まで聞こえる反面、スピーカーで聴くのとはずいぶん感じが違うので、スピーカーでどのように聞こえるかはやはりスピーカーじゃないと確認できないという気がします。 そんなことをずっと考えていた折、レバさんのサイトARCというシステムが紹介されているのを目にして興味を持ちました。詳しい説明はリンク先を見ていただければと思いますが、要するにスピーカーや部屋も含めたモニター環境の癖を測定し、その結果を基に出音の癖がなくなるよう補正するシステムです。商品の中身は、
・測定用のマイク(これはたぶんベリンガーの測定用マイクECM-8000ですね)
・測定用のソフト
・再生用のプラグイン
です。
5月頃に購入済みだったのですが、ものぐさな性格が災いしてずっと放置プレイ状態。今日ようやく重い腰を上げて使ってみました。

1.測定
 マイクをパソコンのオーディオインタフェースにつないでソフトを立ち上げ、測定します。
 ・・・それ自体は全然難しくないのですが、問題は測定ポイント。2つのスピーカーと等距離にあるリスニングポイント一カ所と、左右シンメトリカルなペアのポイントとを合わせて最低12箇所、できれば16-20カ所で測定しなくてはなりません。
 というわけで、測定ポイントをメジャーで計ってメンディングテープで印をつけました。

マイクは耳の高さに合わせます。

で、マイクを所定の位置に設置し、ソフトのボタンをクリックすると、「ビュゥッ」という感じの音が左右のスピーカーから数回ずつ流れます。終わったら、ソフトが次の測定ポイントに進むよう促すので、それに従ってまた測定・・・という流れを繰り返します。

測定が終了したら、DAWソフト(我が屋はDigital Performer)を立ち上げ、マスターフェーダ-にARCのプラグインを挿入すると、以下の画面が立ち上がります。

左側のグラフが左チャンネル、右側のグラフが右チャンネルです。オレンジ色の線がこれまでの特性で、かなり波打っています。これが補正により、白い線のような特性になったということです。
聞いた感じでは、補正前に比べて、
・中低域のもやもやした感じがなくなりスッキリした。
・やや抑え気味だった高域がスキッと抜けるようになった。
という印象で、かなり改善されたという実感を持つことが出来ました。

となると、宅録のモニターだけじゃなくて、iTunesとかでの通常の音楽鑑賞でも補正した音で聞きたくなるのが人情です。何かうまい方法ないかなぁと思ってぐぐってみたら、またしてもレバさんのサイトでAudio Hijack Proというソフトを使う方法が紹介されてました。やっぱり考えることは一緒ですよね~。

もちろん、これさえあればばっちり補正してくれるのだから他がどんなにいい加減でもかまわない、というわけではありません。機材をきちんとセッティングしたり、機材をメンテしたりクリーニングしたりということは必要でしょう。
でも、どんなに高級な機材でもつなぎっぱなしではフラットな特性はまず得られないと思うので、こういうアプローチはとても有効だと思います(いわゆる「ピュアオーディオ系」の人の多くはこういうの好きじゃないだろうなと思うけど)。

さて、モニタ環境も整ったので、明日はミックスとマスタリングにトライしようっと。

【2011.8.21追記】
iTunesによる音楽鑑賞までは補正できたけど、できればレコードを聞くときもそれに近い環境にしたい~ということは、おおもとの特性そのものをフラットに近づけたい~ということで、とりあえずツイーターのアッテネータをいじりました。我が家の自作スピーカーでは固定抵抗の組み合わせでアッテネートしており、これまでは直列3.3Ω、並列4.7Ωだったのを直列2Ω、並列10Ωにしました。これでツイーターのレベルは約3dB上がるはず。
というわけで、測定し直してみました。

補正前の高域部分(オレンジ色の線の右側の方)の特性がずっとフラットに近づきました。
補正ありと補正なしを切り替え試聴しても、昨日よりも違いがずっと小さい感じがします。不思議なのは、ツイッター(ということは高域)しかいじってないのに、中低音の聞こえ方が違うこと。補正なしでも中低域のもやもやした感じがずいぶん減った気がします。

実は、スピーカーを自作した当初のアッテネータの抵抗の値は、今回の変更後の値と同じだったんですね。が、当時は高域のちょっとくせっぽい感じが耳についたので、抵抗を入れ替えて3dBレベルを落としていたのでした。なので、今回は元にもどしたということになりますが、以前気になった高域のくせは今のところあまり感じられません。何年も鳴らし続けてくせが取れてきたということなのかな。それとも加齢で高域が聞こえにくくなってきたとか(号泣)。