ホドロフスキー「エル・トポ」

オーディオ評論家の故・長岡鉄男が、亡くなる前年に出版された「長岡鉄男編集長の本―ヴィジュアル・オーディオ・パワー」という本で、編集者の故・安原顯のインタビューを受けているのですが、今まで見た映画ベストスリーを問われ、一番に挙げたのがホドロフスキーの「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」でした。
ホドロフスキーという名前はなんとなく聞いたことがあったけど、「エル・トポ」も「ホーリー・マウンテン」も見たことがなかったので(もともと映画はそんなに見る方ではないんですが)、ふーんどんな映画なんだろと思いつつ(安原顯は「幻想的な不条理劇」と表現してましたが)そのままになってました。

それから15年。近所のTsutayaで「エル・トポ」のDVDを発見。おお!と思って即座に借りて、見てみました。
うーむ。こういう映画だったのか。

・あらすじ
ウィキペディアにあるとおり、わりとちゃんとしたストーリーがある感じです。西部劇仕立てだけど、メキシコ映画ということで(ホドロフスキーがチリ出身ということもあるかもしれないけど)ラテン風味が感じられます。
・残虐
とにかく大量の死体(人やらウサギやら)が登場し、人がどんどん殺され、おびただしい血が流れます。でも、あまりグロい感じがしないのは、もっとグロい映像が世の中に氾濫するようになって感覚が麻痺したからなのかな(基本的にそういうのは苦手なので近寄らないようにしている)。でも、必ずしもそうでもないような気もする。
・変、ユーモラス
バックグラウンドにチベットの仏教音楽が流れ、登場するガンマンは最初に登場する中佐を除くと、およそガンマンのイメージとはかけ離れた、神秘的な修行者みたいな連中ばかり。音声も変で、主人公と恋人につきまとう女の声はどう聞いても男そのものだし、息子を殺された母親は鳥か小動物みたいな声を発し、最後に対決したガンマンに自殺された主人公が衝撃の雄叫びを上げるシーンには、チベットのチャルメラっぽいホルンの音が(たまたまBGMと重なっただけかもしれないけど・・・やっぱり雄叫びとして使っているような気がする)。最初の方で登場する中佐(だっけ)が主人公にチン○コを切られ、素っ裸のまま股間を押さえながらよろよろと歩いていって自殺するシーンも陰惨なんだけどなんだか笑える・・・。
・哀しみ
息子は父親に捨てられ、父親は恋人に捨てられ、母親は目の前で子供を殺され。地底世界で暮らす人々は待望のトンネルが完成して麓の街に殺到して街の住人から撃ち殺され・・・。なんか、じんわりと来る哀しみのようなものがあったように思います。

今まで見た映画の中でベストワンかと言われるとアレだけど、なんとなく妙な引っかかりのある作品ではありました。
「ホーリー・マウンテン」見ようかな、どうしようかな・・・。

  


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