アナログプレーヤいじり その15~ピックアップの低域共振周波数を計ってみる その3


去年の5月11日のエントリーで紹介した、トーンアームのヘッド重量と実効質量のグラフですが、なぜアームによってグラフの傾きが異なっているのか、その理由について考えてみました。
※上のグラフは、「レコードとレコード・プレーヤ(ラジオ技術社)」に載っていたもので、以前のエントリーで紹介したものグラフよりも多くの機種のデータが取り上げられています。

(1)ヘッドの実効質量がヘッド重量に比例(というかほぼイコール)するのに対し、カウンターウエイトの実効質量はヘッド重量の2乗に比例する。
・ヘッド重量を倍にすると、バランスを取るためにはカウンターウエイトの支点からの距離を倍にしなくてはなりません。
・カウンターウエイトの実効質量は支点からの距離の2乗に比例します。
・従って、カウンターウエイトの実効質量はヘッド重量の2乗に比例することになります。
(2)(ヘッド重量を一定とした場合)実効質量全体に占めるカウンターウエイトの実効質量の割合は、カウンターウエイトの重量が小さいほど大きくなる。
・ヘッド重量を一定とした場合、例えばカウンターウエイトの重量を半分にすると、バランスを取るためには支点からカウンターウエイトの距離を倍にしなくてはなりません。
・実効質量は重量に比例する一方で支点からの距離の2乗にも比例します。
・従って、重量が半分・距離が倍になると、トータルでは実効質量は倍になります。
・つまり、カウンターウエイトの重量と実効質量は反比例することになります。
(3)「ラジオ技術 1973年5月号」の「低音特性を左右するアームの問題点(唐沢祐東)」という記事に以下のような記述があります(概要)。
・ヘッドもカウンターウエイトも大きさを持たない
・ヘッドとカウンターウエイト以外の質量(パイプなど)は無視する
・バランスを取れた状態とする(針圧は0)
と仮定すると、以下の近似式で実効質量が計算されます。
Mt=Mh+Mh^2/Mw
(Mt=全実効質量、Mh=ヘッド重量、Mw=カウンターウエイト重量)
これをMhで微分したものがグラフの傾きになります。
dMt/dMh=1+2*Mh/Mw
ということで、上記の右辺の第2項(カウンターウエイトに由来)があるため、
Mhが大きくなるほど、Mcが小さくなるほど、グラフの傾きは大きくなることにな
ると思います。
(4)例のグラフに載っているWE-308、UA-7045、SME3009S2の写真を見ると、WE-308のカウンターウェイトは細長い形状をしています。細長いということは、カウンターウェイトの重心が支点から遠い距離にあることになり、従ってカウンターウェイトの重量自体は他の2機種に比べて軽いということになるのではないでしょうか(ちょっと強引かもしれません)。
(5)疑問点:
 これまで書いてきたことが正しければ、グラフの形は下に凸の曲線になりそうですが、機種によっては上に凸の曲線になっているものがあります。なぜでしょうか・・・。
※この問題を考えるきっかけを与えていただいた、アナログレコード再生のページのyoshさんに感謝します。

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アナログプレーヤいじり その15~ピックアップの低域共振周波数を計ってみる その3」への10件のフィードバック

  1. 渋谷@世田谷

    >なぜ上に凸
    お久しぶりです。ウェイト軸と本体のつなぎ目にゴムが入っていてそのつぶれ具合による非線形性の影響が見えていたりするのではないでしょうか?
    このグラフだけからは測定条件がわかりませんが、方向を横方向で実効質量が違っていたりするかもしれません。
    こうした効果が意図した効果なのかどうかはさだかではありませんが。

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  2. heli

    >渋谷さん
    まいどです。つなぎ目のゴムが影響しているというのはありそうですね(本には測定方法書いてないので正確なことはわかりませんが)。
    80年代のMJにアームの機械インピーダンスを計測する記事があって、アームの先を加振して周波数を上げていくと次第に機械インピーダンスも高くなっていくのだけど、所々で共振を起こして、そこから上の周波数では機械インピーダンスがすとっと下がる(スプリングの先にある質量が抜ける)というグラフがありましたが、あれと同じような話なんでしょうかね。

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  3. 渋谷@世田谷

    えーと、機械インピーダンス(スティッフネス)は、その元に応じて、一般的に下から順番に、
    1)バネ性(-6dB/Oct)
    2)粘性(0dB/Oct)
    3)質量性(6dB/Oct)
    というバスタブ・カーブになるので、ほぼDC領域でのスタティック・スティッフネス(コンプライアンス)が最低共振を決めるパラメータになるわけなのですが、通常100Hzや1KHでのインピーダンス(コンプライアンス)がカタログに載っていて混乱のもとになるわけです。
    で、ここで述べた非線形性は、こういった線形な話とは別のゴムの物性の効果のよってきたるところをさしているつもりです。

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  4. heli

    えっと、80年代のMJに載っていた記事は、カートリッジではなくアームの機械インピーダンスを計測したものだそうです(あんまりよくわかってない)。
    アームの頭に(針の付いていない)ダミーのヘッドを取り付け、加速度比例型の圧電素子を挟んで加振機を取り付けて振動させるというもののようです。
    アームが完全な剛体なら、周波数を上げていくに従って機械インピーダンスも一直線に上がっていくことになるものの、実際にはヘッドシェルやカウンターウェートの取り付け具合、パイプの強度などもあって、特定の周波数(複数)で共振し、そこから上の周波数は少し下方向に平行移動したラインになっています。
    で、各機種のデータを見ると、ゴムかませたりバルサ詰めたりすることで何とかコントロールしようとしているとおぼしきものもあれば、特段何もやっていないとおぼしきものまで多種多様で、このあたりの試行錯誤的な「作り」がいろんなところに影響してきているのかなぁ、なとど思った次第です。

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  5. 渋谷@世田谷

    アーム単体の機械インピーダンスの話ですね。
    完全剛体で摩擦なしだと、支点だけに振動の節があることになるので、全体の慣性モーメントと支点での粘性抵抗だけを考えればよくなり、力学モデルとしては、1自由度モデルになります。
    こういうモデルの通りならば、インピーダンスは右上がり一直線のはずですが、そうじゃないのでぎっこんばったん….というグラフのことですね。
    以上は、1+その他自由度モデル。
    カートリッジとアームの組み合わせ状態では、最低でも、アームの支点とカートリッジの支点に自由度のある2自由度モデルによる解析が必要です。
    この場合は、2+その他自由度モデル。
    普通シェルから交換するやつ(DJ用と日本の民生用にしかじつは生き残っていませんが)は、集中質量のすぐうしろに面で突合せたジョイントがあることになるので、どうしてももう一つ振動モードの自由度ができてしまうので、設計パラメータの取り方の自由度が逆に限定されて、あまり思い切ったことはできません。

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  6. heli

    色々考えるほど、ユニバーサル型のシェルは不利な点が多いですね。
    コネクターのせいで、針先に近い部分で質量が増えてしまうので、ローマスハイコン用に実効質量を小さくしようにも限界があったり。
    ・・・などと言いながらテクニクスのプレーヤー買ってりゃ世話はないわけですが(爆)。
    だって便利なんだもーん。

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  7. 渋谷@世田谷

    本当に思い切ったことを試せるほどユニバーサルじゃないですけど、限定範囲内でいろいろなカートリッジを売りたいほうにも買いたいほうにも便利にできているわけです。
    カートリッジをとっかえひっかえしない人や、状況では特にメリットはないとおもいますけど。

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  8. heli

    いやまぁ全くそのとおりなんですが。
    我が家にはLevelII,F-14に加え、最近ヤフオクでF-14のモノラルボディなんぞゲットしちまったりしてるもんで(縛)。
    うーむ。やはりいにしえのヲデヲ業界のマーケティングの呪縛に絡め取られてしまっているのであらうか。

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  9. 渋谷@世田谷

    >呪縛
    いやぁ、通常の意味でのマーケッティングじゃなくて、heliさんが一期一会的出会いを反芻して結晶した成果でしょう(笑
    なんかそのうちS3のアームが1ダースくらい並ぶような気がします。

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  10. heli

    正直なところ、カートリッジが複数あるというのは楽しくもある反面、なんか居心地が悪いというか落ち着かない気分がするのは否めない感じがします。
    >S3のアームが1ダース
    いや、さすがにそのような事態は避けたい(笑)。
    カートリッジは3つもあればもうtoo muchです。
    (って、針は半ダースあるけど)

    返信

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