90年代半ばにギター弾き語りを始め、音楽教室に通ったりもしていたのですが、数年経った頃に右手に異変が生じました。当時はピックでストロークしたり簡単なソロを弾いたりしていたのですが、なんだか思うように手が動かなくなってきたのです。最初はなんだかうまく弾けないな、くらいの感じだったのが、そのうちそんなに速くないエイトビートのストロークすらうまくできなくなってしまいました。
不思議だったのは、親指と人差し指で何かをつまんで正確に動かすこと(私の場合はピックでギター弾くことと字を書くことくらいなんだけど)だけが不自由なこと。その他の日常生活(フィンガーピッキングギターやピアノを弾いたりすることも含め)で不自由を感じることはほとんどありませんでした。箸を使うのもそんなに問題なかったですね。
あれこれ調べてみたところ、どうやらこれはジストニアという症候群の一つである「書痙」らしいことがわかってきました。基本的に中枢神経系の不具合らということで、治療法としては、手術(たとえばこれ)とか薬物療法(ボツリヌス毒素を使ったりするんですよ!)とかがあるようですが、どっちも結構なかなか強烈なものがあるので、とりあえず以下のような方針で臨むことにしました。
・字を書けないのはかなり不自由なので、慶応大学病院のリハビリテーション科でリハビリ的アプローチを試してみました。書いているうちに手首が内側に曲がってきてこわばってしまうという症状だったので、手首が内側に曲がらないよう固定する器具を作ってもらい、それを取り付けて字を書く練習を続けたところ、ゆっくりと書けばまぁまぁ日常で不自由しない程度には書けるようになりました。
・一方、ギターはなかなか難しいものがありました。字はある程度ゆっくり書くことが許されるけど、ギターは音楽である以上テンポを守ることは重要で、ゆっくり弾いたら音楽にならないんですよね。
というわけで、いろいろ思案した結果、左で弾くことにしました。右手はピックで弦を弾くことはできないけど、弦を押さえることはできるんですよね。まったく奇妙なもんです。周りからは「信じられない」というような反応をもらうことが多かったけど、個人的には好奇心をもって結構楽しく取り組んでましたね。
・・・といったことも今となっては懐かしい思い出と化しつつあるんですが、最近ふるんさんという素敵なコンサートをいっぱい企画している方(先日はyojikとwandaも出演!)がtwitterで紹介してた「ギタリストBilly Mclaughlinが左手の握力を失う病気で2002年にシーンから消え、2008年に右利きからサウスポーのギタリストになって復活した動画。」を見て、自分以外にもジストニア(今は書痙も含めたフォーカル・ジストニアという概念があるんですね)が原因で左に転向した人がいることを知り、なんだか感慨深いものがあった次第です。それにしてもBilly Mclaughlinって、ジストニアになった時期も近いし、何より弾いてるギターがギルドF50ぢゃん!!! 私が初めて買った左用ギターもギルドF50だったんですよ(1974年製の中古品。あまりにも重たいギターだったので売ってしまったけど)。いやー。