昨年11月に日産マーチ(三代目)を買って以来、時々ネット上のマーチの情報を探してみたりしているのですが(例えばこれとか)、最近読んで「おお!」と思った記事を紹介します。ガズーというのはトヨタがやっているクルマ関係の情報サイトということなのかな。
『若手カーデザイナーが「中古のマーチ」に見いだした自動車の本質』
まず何よりも、私が持っているのと同じ日産マーチ三代目の中期モデルで、色も同じアイリッシュクリーム! いやーこの色いいんですよねー。
違うのは内装の色。私のはベージュ(エクリュ)ですが、この車は青系。あとは、私のは5MTですがこの車は4AT。
写真はとってもラブラブですが、それはそれとして(笑)記事は非常に興味深いものでした。
ベーシックで使い勝手の良い車がすぐそばにあること。そして愛する人とともに、それを使いながら“生きる”ということの、かけがえのない価値。
ドライビングプレジャーに関しては、22歳でフィアット パンダを買ったときからよく知っているはずの松下伸彦さん。そんな松下さんは30歳となった今、それとはまるで別種の新しいプレジャーを、初心者として噛みしめている。
その新しいプレジャーは果たして何と呼称されるべきなのか、筆者は寡聞にして知らないが。
そのような、「ドライビングプレジャー」とは別の「プレジャー」は、クルマというものが発明されて以来、変わりゆく人々の暮らしと密接に結びついてきたものだと思います(2CVの話が出てきているのが象徴的)。
「歴代マーチのすべて」というムック本に、歴代マーチの開発者の対談があるのですが、その中にこんな発言があります。
また当時(=80年代後半頃)のトヨタの商品戦略は、金太郎飴的で、どの車種も同じような特徴を備えていました。スターレットから次のクルマに乗り替えるときは上級車種への移行を促し、コロナ、マークⅡ、さらにクラウンへと導く売り方があったのです。ところが女性のお客様は上級移行しません。
クルマのない家に生まれ育ち、30近くになって初めて免許を取った私は、クルマに関する知識を得るために、故・徳大寺有恒氏の「間違いだらけのクルマ選び」を愛読していましたが、このトヨタ車の金太郎飴的上級移行の話にはずいぶんお目に掛かりました。そして、それが昭和〜平成前半のホモソーシャルなサラリーマン社会の年功序列に対応していることも。そういう意味では「女性のお客様は上級移行しません」というのは、この社会で多くの女性は出世と無縁であるという事実と対応していることになるのでしょう。正確な文言は思い出せませんが、「間違いだらけのクルマ選び」にこんなことが書いてあった記憶があります。「・・・私のような者にはよくわからないが、会社から与えられたクラウンの後部座席に座ることはとても価値のあることなのだろう」。これもそのような世界に身を置く者にとっての「プレジャー」なわけですよね。
ちなみに、当時もそのような「プレジャー」から離脱しようという試みがなかったわけではないようです。例えば1992年に発売されたレパードJ.フェリーというクルマの広告のコピーは「美しい妻と一緒です。」
・・・まあ、これが昭和の限界だったとも言えるでしょうか。ちなみに、今回紹介している記事の写真に「美しい妻と一緒です。」というコピーが似合うかというと、客観的事実を伝えているという意味では正しいかもしれないけど、これは全然似合わないと思います。それは「美しい妻と一緒です。」というコピーが根本的に男目線だからで、実際のところ運転は男、助手席に女という役割が固定されている感じがします。今回紹介している記事を見ると、奥様も運転がお好きだそうで、楽しそうにハンドルを握っている写真が印象的なんですよね。
これが30年の歳月がもたらす変化、というものなのでしょう。
一方、マーチも↓のようなCMをみてもわかるとおり「女性向け」を意識したクルマだったはずなのですが。
でも、虚心坦懐にこの「かわいいけどファンシーではない」デザインを見ると、別に女性向きということもないと思うんですよね。もしかしたらSRという走り屋さん向けのモデルも用意する関係上そうなったということなのかもしれませんが(ただの想像です)。
いずれにしても、モデルチェンジから10年たったクルマがこんなふうに今の時代にふさわしい「プレジャー」を与えてくれるのって素敵だと思うのです。