高校生の頃に読んだオーディオの入門書に「クリスキット」というアンプのキットが紹介されていました。
その本はスピーカーやアンプを自作する楽しさを熱く主張していて、すっかり感化された僕はクリスキットという名前を心に刻みながら自作道(というほどのもんでもないけど)へと突入していったわけです。
その後、クリスキットの設計者である桝谷英哉氏のステレオ装置の合理的なまとめ方と作り方という本を読みました。元々理工系ではない桝谷氏は40台半ばで東京電気通信大学の通信講座で交流理論を勉強したとのことで、文章はかなりの毒舌調でしたが、「物理の原理を使って出来上がったステレオを、物理抜きで理解することは不可能であること位誰だってわかるはずだ」などと諭されたことが後々まで尾を引いて、今年になってから物理や数学の勉強をおっぱじめたりしている次第です。クリスキット自体は結局買わなかったものの、オーディオに臨むその姿勢には大きな影響を受けたのでした。
5年前に桝谷氏が逝去された後もクリスキットの販売は続いていましたが、先日クリスコーポレーションのホームページに来年3月にクリスキットの販売を終了する旨の告知が出ました。告知文によれば「大変勝手ながらこの時期に遥かなる世界へ住む設計者桝谷英哉の元に全てを帰し、心ゆくまで音楽を楽しんでもらいたいと考えて参りました」とのこと。
改めて、一つの時代が終わった感じがしています。
真空管アンプのキットはエレキットを始めいろいろ出ていますが、半導体アンプのキットとなるとクリスキット以外にはほとんど見あたらないのが現状ではないかと思います。基板+部品みたいなものは部品屋さんからいろいろ出てますが、文系初心者にとっつけるようなものではないように思いますし。
桝谷氏がやってこられたことには遠く及ばないながらも、文系初心者が半導体アンプ作りに興味を持ってくれるような情報をもっともっと発信していけたらと思います。