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北海道自家用車旅行その16〜余市・小樽間の鉄道に乗る

今回は自家用車旅行なので、鉄道やバスに乗ることは基本的にはないのですが、余市と小樽の間の鉄道だけは乗ろうと思ってました。
最大の理由はもちろん、北海道新幹線の札幌延伸に伴い並行在来線である函館本線の小樽・長万部間(いわゆる「山線」)の廃止が決まってしまったことです。

私が子供の頃(もう半世紀も前のことです)、札幌・函館間のメインルートはすでに千歳線・室蘭本線(いわゆる「海線」・・・ってあまり言わなかったような。私だけ?)であり、山線はローカルな扱いでした。
千歳線・室蘭本線の方が距離は長いものの平らで真っ直ぐな区間が多いため所要時間は短く、室蘭や苫小牧など大きな町もたくさんあるので、まあ当然だとは思います。
それでも、まだ優等列車はそれなりに走っていました。中学校に入学する直前の春休みに家族で東京の親戚のところに行ったとき、帰りの函館から札幌は特急北海に乗りましたが、これは山線回り。
大学の頃に東京に遊びに行くときや、東京に就職したあと青函トンネルが開通する前は、札幌・函館間はもっぱら急行ニセコを使ってましたね。海線回りの急行すずらんの方が本数も多かったのに。
あと急に思い出したけど、小学校の頃、家族で有珠に海水浴に行ったときのこと。帰りになぜか伊達紋別から札幌まで循環急行(札幌発札幌着ということです)いぶりに乗ったことがありました。

個人的には、殺伐とした工業地帯(ばかりではないけど)の海線より、緑豊かで風光明媚な山線の方を圧倒的に好んでいたことは確かです。
が、それは要するに過疎地域ということでもあります。
小樽を過ぎたら長万部まで「市」がないんですよね。
「函館本線」と名前は立派ですが、実態はローカル線そのものでした。
北海道には他にもっと収支が厳しい路線があるではないか、とか、特に小樽・余市間は通勤通学路線として大いに利用されている、とか、いろんな論点はあったようですが、廃止が事実上確定したと報じられている以上、できることは廃止されるまでの間にせいぜいたくさん乗っておくことくらいなのかなという気もします。。。

というわけで、宿の朝食までの間、朝の散歩のように余市と小樽の間を往復してきました。

宿の部屋から見た余市駅前。

余市から小樽までの鉄道の前面展望。左川ちかの散文詩「暗い夏」には、この鉄道で通学していた頃の記憶が遺されています。

・・・少女の頃の汽車通学。崖と崖の草叢や森林地帯が車内に入って来る。両側の硝子に燃えうつる明緑の焔で私たちの眼球と手が真青に染まる。乗客の顔が一せいに崩れる。濃い部分と薄い部分に分れて、べつとりと窓辺に残こされた。草で出来てゐる壁に凭りかかつて私たちは教科書をひざの上に開いたまま何もしなかつた。私は窓から唾をした。・・・

30分弱で小樽に到着。

とんぼ返りで余市に戻ってきました。


北海道自家用車旅行その15〜かくと徳島屋旅館

余市や小樽の市街地の宿に泊まったことはありませんでした。
以前に書いたとおり、札幌に生まれ育った私にとっての余市や小樽って「子供の頃、夏休みに海水浴に行くところ」だったんですよね。
いきおい、宿も海水浴場に近いところ、ということになります。
忍路(おしょろ)の民宿とか、美国(びくに)や野塚の旅館とか。
大学のときには、野塚の海岸でテント張ってキャンプをしたこともあったな。海は素晴らしくきれいだったんだけど、めっちゃ蚊に刺されて死ぬほどかゆかった記憶が。。。
いずれにしても、はたちになる前のことです。

というわけで、余市に泊まるのは今回が初めてです。

宿はかくと徳島屋旅館という駅前旅館。
前回書いたとおり、余市の人々。という連載記事に紹介されていたのを見て知った宿です。
とても面白い記事ですが、泊まりたい!と思った重要なポイント(の一つ)はやはり料理が美味しそう!だということ。
ご主人が京都で修行した腕を振るって〜そもそも単なる宿ではなく、宴会や仕出しまで手がける料理がメインの旅館だったようです〜地元の魚や野菜をふんだんに使った料理を食べさせてくれる。お酒も地元のワインやシードルがある。
いいですよね〜。

この、水産業と農業の両方を兼ね備えているというのが、余市の独特なところだと感じています。
周辺の町を見ると、小樽や古平、積丹は水産業は盛んでも平地が少ないので農業はあまり行われていないのではないかと思います。一方、仁木や赤井川は内陸で水産業がありません。
しかも、余市の農業の特徴として果樹栽培が盛んなことがあります(小学校の頃、社会科の授業で習うくらいです)。余市町のウェブサイトに20年近くにわたって連載されている余市町でおこったこんな話〜これがまた興味深い話がてんこ盛りなんですよね。あまりにも膨大なのでまだ全然読めていませんが〜のその17「リンゴ」によれば、余市でリンゴ栽培が始まったのは126年前とあります。2005年の記事だから、1879年ですね。最近では平成23年に「北のフルーツ王国よいちワイン特区」として認定されたりしているようです。
こうしてみると、余市の「食」って豊かだなとつくづく思います。

というわけで晩ご飯。じゃじゃーん。

献立はこちら。八角が食卓に上ると北海道に来たな〜という気分になりますね。焼き牡蠣にとろろ昆布が仕込んであるのも芸が細かい(そして美味い)。

そして酒。やはり左川ちか全集刊行を祝するとなると、ここはワインでは無くシードルでしょう。
しかも登町産。もうどんぴしゃりですね。

いかにシードルの度数がそれほど高くないとはいえ、ボトル一本を独りで空けるとべろんべろんですわ。
というわけで、食後は即死。