十和田湖と野付半島で、H5N1型鳥インフルエンザに感染して死んだ白鳥が発見されました。
ちょうど今くらいの時期に北海道の湖で白鳥の大群を何度となくみたことがあるので、今後集団感染で大量死、みたいなことが起こるのではないかと、とても心配です。
これに関連して、鳥インフルエンザ直近情報の中の十和田湖で発生H5N1鳥インフルの問題点という文書を見たところ、こんなことが書いてありました。
>(秋田県の)一部(鶏)飼養者は「EM(抗生物質)をやって
>抵抗力が上がっているからインフルエンザにはかからない。」
>「100%の自信が有る。放し飼いにより丈夫になるため、鶏は
>インフルエンザにはかからない。」等との主張。県に放し飼
>い禁止の命令を出すように要請するが、出来ないとの返事。
EM(抗生物質)というのがよくわかりませんが、抗生物質はウイルスに効かないだろうし、これまで鳥インフルが猖獗を極めた各国の鶏の多くは放し飼いだったし、EMというのがあのEMのことだったら(参考:「科学とニセ科学」レジュメ(ver.2)の中の「EM菌はニセ科学か」の項)・・・
なんだか、今後の鳥インフル対策の行く末を思うと、暗澹たる気持ちになるのは取り越し苦労でしょうか。
【追記】その後検索したところ、EMはエリスロマイシンという抗生物質のことらしいことがわかりました。もちろんそうであっても、抗生物質はウイルスには効かないことに変わりはないですが。
【さらに追記】と思ったら、タイ国における鳥インフルエンザの発生状況とEMの効果についてという文書を発見。うううううう。
一般論として、何かが病気の治療や予防に効果がある、という考えの表明は慎重であるべきではないかと思いますが、特に対応次第では社会的に重大な結果を招きかねない鳥インフルエンザのような感染症の場合はなおさらではないかと考えます。
おそらく、「インフルエンザ菌」と「インフルエンザウイルス」を取り違えているのでしょう。
「インフルエンザ菌」という、インフルエンザの様な症状を起こす菌があって、こちらには抗生物質は効くんです。
いま問題にしているのはウイルスですからね。抗生物質は効きません。
>kephisさん
いらっしゃいませ。
ご指摘の件ですが、EMが抗生物質のことを意味する場合、誤解のパターンはふたつあろうかと思います。
1)抗生物質の効果に対する誤解(抗生物質はウイルスにも効果がある、等)
2)インフルエンザの原因に対する誤解(インフルエンザの原因は細菌である、等)
もちろん、1)2)の両方とも誤解しているというケースもあるでしょう。
文部科学省が行った「科学技術に関する意識調査」で、抗生物質のウイルス殺傷効果に関する設問の正答率が一番低かった、というのが私の意識にあったので、1)のような話なんじゃないかなぁと思ってました。
http://www.nistep.go.jp/achiev/abs/jpn/rep072j/rep072aj.html
いずれにしても、抗生物質の話なのであれば、サイエンスとしての医学の守備範囲なので、専門家の説得というか啓蒙によって誤解を解くのは比較的容易なんじゃないかと思います。