今シーズンのスキージャンプ女子ワールドカップの流れ

今シーズンのスキージャンプ女子ワールドカップは、ソチワールドカップまでに13戦行われています。うち高梨が10勝と圧倒的な強さを見せつけてきたのは周知のことですが、ここでは他の選手がどうだったのかを見てみようと思います(詳細はこちら)。
■フォークト(ドイツ、ランキング2位)
 優勝こそ一度もしていないものの、表彰台に上ったのは実に8回、10位以内に入れなかったのはわずか1回とコンスタントに好成績を残し続けたわけですが、高梨を上回ったのは第5戦だけ。それがとうとうオリンピックで高梨をしのいで金メダルをゲットしたわけだから、そりゃうれしかったでしょうねー。
■イラシュコ=シュトルツ(オーストリア、3位)
 長年にわたってトップジャンパーとして女子ジャンプ界を牽引し続けた一人ですが、昨シーズンは怪我で棒にふることに。復帰した今シーズンは最初の2戦こそ2位に入ったものの、その後はいまいちぱっとしない成績が続きました。が、8〜9戦を休んだ後は別人のように絶好調になり、オリンピックのトレーニングまでは高梨と互角以上のジャンプを連発。正直なところ、オリンピックでは本命はこの人かな?と思ってましたが、1本目の不本意なジャンプが響いて結局銀メダル。
■アブバクモワ(ロシア、4位)
 シーズン始めにめきめきとのし上がってきて、第5戦にとうとう優勝したのを始め、7戦中6戦で表彰台に上り、オリンピックでは高梨の最大のライバルか? と思いました。自国開催のオリンピックということもあって、ロシアでの期待も盛り上がったんじゃないかと思いますが、8〜9戦を休んだ後はイラシュコ=シュトルツとは逆に憑き物が落ちたようにいまいちな状態になり、オリンピックでも結果を出せませんでした。
■マッテル(フランス、7位)
 以前、インタビューで「自分と高梨の違いは、自分のベストのジャンプを高梨はいつもできること」と言っていたとおり、なかなか良いジャンプが二本そろわないことが多く、今期は表彰台には一度しか上がってませんでしたが、オリンピックでは良いジャンプを2本揃えて、かつテレマークもばっちり決めて見事銅メダル。これもうれしかっただろうなぁ。
■伊藤(日本、5位)
 マッテル同様、なかなか良いジャンプが2本そろわない印象がありましたが、オリンピックでも残念ながらそのような結果になりました。2本目はこの回2位となるビッグジャンプを見せたものの、いまいちだった1本目が響いて7位。まぁそれでも入賞だから大したもんです。
■ヘンドリクソン(アメリカ)
 昨シーズン、もう一人のサラとして高梨の最大のライバルと目されていたヘンドリクソン。今期は怪我でずっとワールドカップには出場していなかったのが、オリンピックには出場すると聞いてちょっとびっくり。トレーニングではやはり最初のうちはぜんぜん距離が出なかったけど、1本とぶごとにめきめきと調子を上げ、最後はK点近くまで飛ぶようになったのはさすがという感じ。
■ザイフリーツベルガー(オーストリア)
 ちょうど今シーズンのフォークトのようなポジションにいたのが昨シーズンのザイフリーツベルガーでしたが、昨年12月のトレーニングに大けがをしてオリンピックには出場できず。同じ国のイラシュコ=シュトルツと入れ替わるような格好になってしまったのは残念でした。

というわけで、調子の波やら怪我やら周囲の期待やらが本人の素質と相まって、得も言われぬ栄枯盛衰の波がうねっていたオリンピック前のワールドカップであったことよ。


2 thoughts on “今シーズンのスキージャンプ女子ワールドカップの流れ

  1. 余 偉 明

    日本のオリンピック報道は他国の選手の紹介等も比較的してくれるほうだと個人的には思っています。しかし今年に限っては沙羅さんが破竹の連戦連勝だったためか女子ジャンプの報道は彼女中心となってしまいましたね。紹介いただいた各国選手のドラマが当然あり、メダルをとった人、取れなかったひとも悲喜こもごもあった。怪我で出遅れたSarah Hendriksonさんが沙羅さんのことについて「そんな時もある、It’s Okay to make mistakes….」と言っていたのが印象的でした。相手が居ての大舞台。なんだかホットするSarahさんのお言葉でした。沙羅さんも悔しい中、試合後の態度、コメントは立派でしたね。沙羅さんは今回メダルは成りませんでしたが、個人的には彼女のこれからの長いジャンプ人生という意味ではよかったのではないか思います。長野金メダリストの原田さんは彼女の気持ちを誰よりもわかる一人でしょうね。

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  2. heli 投稿作成者

    >余さん
    オリンピックはいつもそうですが、今回の女子ジャンプもいろいろ味わい深いものがありましたよね。個人的には、ヘンドリクソンやザイフリーツベルガーのように、怪我で本来の力を発揮できなかったり出場することもできなかった人のことが気になったので、この文章を書こうという気になったという面もあります。

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