マイクプリ自作への道 その19~雑音について

たまたま見つけた変人音館というサイトの中にマイクプリの製作という記事があったので、興味を持って読んでみました。
(今回はちょっと立ち入った内容です)

正直なところ、ネット上でマイクプリの雑音についてきちんと計算しているのを初めてみたのですが、ここで気になる記述が。

オペアンプをAD797からOPA627AP(En=5.6nV/√Hz, In=2.5fA/√Hz)に変更してみました。最大ゲインを26dBに変更して、室内で録音してみましたが、AD797とOPA627とのノイズ差がほとんどありません。計算上は、少なくとも2倍以上のノイズの差があるはずなのに、です。

詳しい方に質問したり(非常に迅速かつ丁寧に貴重なアドバイスをいただきました。ありがとうございます)、エクセルであれこれ計算したりしつつ理由を考えてみましたが、どうも以下のようなことなのではないかというのが現時点での認識です。
●コンデンサーマイクが実際に発する雑音電圧は、コンデンサーマイクのインピーダンスから計算される熱雑音よりもずっと大きいのではないか。
 例えば、RODE NT1-AのS/N比を見ると、
 88dB (1kHz rel 1 Pa; per IEC651, IEC268-15)
 となっています。
 但し書きの正確な意味がいまいちよくわかりませんが、信号の方は1kHzの音声1パスカル(94dB SPL)の時の信号電圧(NT1-Aのスペックを見ると25mVとなっています)、雑音の方はIHF-Aで重み付けした雑音電圧ということなのではないかと考えました。
 てなわけで雑音電圧を計算すると、
 25mV÷雑音電圧=88dB
 より、
 雑音電圧≒1μV
 となります。さらに、帯域幅当たりの値(雑音電圧密度)にするためには、IHF-Aで重み付けしている場合は帯域幅は13000Hzで考えれば良いとのことですので、
 1μV÷√13000Hz≒8.8nV/√Hz
 一方、NT1-Aのインピーダンス100Ωの熱雑音を計算すると、
 √4kTRs=1.3nV/√Hzです。
※なお、このような計算でよいかどうか、RODE Microphones社に問い合わせてみました。もし返事がいただけたら報告します。
●このようにマイクのインピーダンスから計算される熱雑音よりもコンデンサーマイクが発する雑音全体の方がずっと大きい理由は、おそらくコンデンサーマイク内部から発する別の雑音(例えば内蔵されているFETが発する雑音)が付加されるからではないかと想像しています。
●「解析 OPアンプ&トランジスタ活用」という本に載っている「代表的な低雑音オペアンプの電気的特性」を見ると、最も雑音電圧密度が大きいもの(NE5534A)でも3.5nV/√Hzに過ぎず、上記の8.8nV/√Hzという値よりもずっと小さいことがわかります。したがって、これらの低雑音オペアンプを使う限り、S/Nに大きな違いは出ないということになるのではないでしょうか。
●となると、OPアンプによる増幅回路の設計技法に載っている方法に疑問が湧きます。オペアンプの特性ノイズ抵抗と信号源インピーダンスが等しいときに雑音指数が最小化することは確かでしょうが(「基礎トランジスタアンプ設計法」に載っている式(4-118)の対数の中身をRsで微分して0と置くと出てくる)、この信号源インピーダンスを考える際にマイクのインピーダンスで考えていいのか、さらにオペアンプの特性ノイズ抵抗と合わせるためにトランスを使うことは妥当なのか、疑わしく思えてきました。
・・・というわけで、次はトランスなしのアンプにチャレンジ!(爆)


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