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北海道自家用車旅行その20〜香川の「りんごもなか」と「べこ餅」

すでに米やらアスパラやらを買い込んではいますが、もうちょっとお土産っぽいものも買おうということで向かったのが、余市の市街地にある香川というお菓子屋さん。これまた余市の人々。で紹介されていた店で、今年で創業108年らしい。とすると、創業年に左川ちかは3歳か。。。
名物は「りんごもなか」で、今回の旅のお土産には実にふさわしく感じられる一品。くどさのない素直なもなかにりんごの自然な味わいが良いアクセント。美味しかったです。

そしてショーケースを見回していて俄然目にとまったのが「べこ餅」。
昔から、べこ餅はスーパーとかで売っているものと和菓子屋で売っているものは全然違うと感じていて、前者はつるっとしているのに対して後者はべとっというかもたっというか。で、好みなのは圧倒的に和菓子屋のやつ。でも、観光物産店のようなところで買いやすいのは前者のタイプで、和菓子屋系のやつはずいぶん長らくお目に掛かることがありませんでした。
が。香川のショーケースに鎮座ましましているのは明らかに和菓子屋系のそれ。しかも黒糖部分が多めで、その色合いもとってもネイティブ(?)な感じ。ラップでくるんでいるのも手作り感満点。もちろん買いました。こちらも帰宅後いただきましたが、期待に違わぬ味と食感に号泣しました(大げさ)。


北海道自家用車旅行その19〜米とアスパラガス

話が前後しますが、午前中に登町の果樹園地帯を逍遙した後、南隣の仁木町の観光農園、紅果園に足を伸ばしました。
紅果園は私にとって、「旭りんごと昔とうきび(クロスバンタム)を買うところ」なのですが、今回はなにせGW.まだりんごもとうきびもありません。
というわけで、今回の目当ては米です。
以前に読んだ紅果園のお米販売ページからは、味が最優先!生産性は二の次!というポリシーが伝わってきて、これはぜひ食べてみたい!と思ったのですが、なにしろ米は重いので、お土産に持って帰るのも難しいし宅配便を使うと結構お金がかかります(米に関してはたくさん買っても送料は変わらないようなので、まとめ買いすれば良いのですが)。
しかし!今回は自家用車旅行!米だろうが土嚢だろうが何でも来い!

お店に行ったら、さすがに季節外れということもあって、あまり営業している感じでもありませんでしたが、ふつうに米は買うことができました。3種類くらいあったけど、今回は「ゆめぴりか」をゲット。
帰宅後、さっそく食べてみたけど、確かにこりゃうまいわ。半端ない粘りと旨さ。

お店の人に「いつもとうきびやりんごを買ってるけど、今の季節は何もないですかね〜」と尋ねたところ、「今はホワイトアスパラが美味しいですよ!」とのこと。これは耳寄りな情報を頂いたということで、農産物の直売所を探索し、見つけたのがきのこ王国 仁木店。併設の直売所に行ったら、あった!
帰宅後、シンプルに塩ゆでにしていただきました。うっまー! ホワイトアスパラはスープがまた美味いんですよね。

ホワイトアスパラの産地である共和町は日本で初めてアスパラの栽培が行われたところらしい。
グリーンアスパラの産地の赤井川村は仁木町・余市町の隣町。


北海道自家用車旅行その18〜ヘラガニのトマトクリームパスタ@Jijiya・Babaya

以前に番外編で紹介したWEB本の雑誌の連載「余市の人々。」。どの回も単純に読んでいて面白いけど、お店選びという実用的な目的にも有用です。
というわけで、この日のランチは第三回で登場したJijiya・Babaya。お目当てはヘラガニのトマトクリームパスタ。
札幌育ちの私もヘラガニって聞いたことありませんでした。小樽より南の日本海側で揚がるローカルなカニだそうで、余市では「おやつ」だったとのことですが、おやつにしてはずいぶん立派なサイズじゃないですか?パスタの皿全体を覆い尽くしてるんですが。もちろん、店で一番人気というだけあって、味の方もとっても美味しかったです。


北海道自家用車旅行その17〜余市町登町の果樹園

左川ちかの生家が営んでいた果樹園(林檎園)は、

果樹園では靴下をぬがされた女が殺される。朝は果樹園のうしろからシルクハットをかぶってついて来る。(朝のパン)

といった初期のモダニズムな詩から、

ふもとの果樹園は真白に開花してゐた(山脈)

といった後期の比較的素直な作風の詩まで、何度も登場します。
というわけで、その果樹園のあった辺りを訪れてみることにしました。少し海から離れているので、車がないと行きづらいところです。

■ゆるやかにうねる丘陵地帯の少し小高いところなので、遠くに海を望むことができます。冬の荒天の日だと、海鳴りの音も聞こえたりするんだろうか。。。

■このあたりは観光果樹園やワイナリーがたくさんあるところです。
この日は天気が非常に変わりやすく、晴れたと思ったらとつぜん土砂降りになったり、という感じでした。


北海道自家用車旅行番外編〜冬の余市(2020年1月)

今回余市についていろいろ書く上で、2年前の1月に余市を訪れたときのことをどう書いていたっけ?と思って過去記事を見返していたら。。。

書 い て な い が な

ということで、またまた番外編で恐縮ですが、2年前の写真や動画を蔵出しします。

左川ちかの詩に出てくる余市の自然で印象的なのは、初夏(5月末から6月)の緑と、冬の海ということになるのではないでしょうか。
今回の旅行では前者(GWなのでちょっと早いけど)を、2年前には後者を見たということになります。
もっとも、「海の捨子」「海の天使」などの詩や「冬の日記」などの散文に出てくるのは、「ごんごん音をたて」「真っ白いしぶきがまいあが」る、冬の荒れた海ですが、私が訪れたときは天気は良く、風もあまりなくて、とても穏やかな海でした。まあ、居心地がいいのは圧倒的にこちらの方ですね。というか、海がしけているときに砂浜を散策するのは自殺行為です。

というわけで、砂浜で撮った動画なぞ。
最初は東向きからスタートし、徐々に北に向きを変え、途中ややフラフラしながら最後は西向きになります。
最初に左手の遠くに見える岬はたぶん忍路のあたり。伊藤整の小説に出てくる地名ですね。私も子供の頃夏休みに二度ほど親に連れられて遊びに行きました。
最後に西の方には余市の市街地の向こうに雪におおわれた山々が見えます。左川ちかが「山脈」で

冬のままの山肌は
朝毎に絹を拡げたやうに美しい

と表現しているのは、たぶんこの山々なのかな。
それにしても、こんな穏やかな冬の海を見ながら、だれもいない砂浜で独りぼーっとするのは最高です!

ちなみに、この砂浜の近くに鶴亀温泉という日帰り温泉があって、海風で冷えた身体を温めるのにもってこいです。

最後は写真をあれこれべたべた貼っておきます。

■塩谷駅。子供の頃、蘭島駅で降りたことは何度もあるけど、塩谷駅で降りるのは初めて。塩谷の集落は海に近いところにあるけど、駅は山の中。

■伊藤整文学碑。海を望む見晴らしの良い高台にあり、碑には「海の捨児」の詩句が刻まれています。

■海沿いの国道5号線まで降りて、余市方面に行くバスに乗車。桃内・忍路から積丹方面へと続く美しい断崖絶壁がフロントガラス越しに見えて、気分が一気に盛り上がります。
んが。塩谷から忍路までの道路は断崖絶壁の海沿いを走っていたように記憶しているのですが、今はトンネルだらけの区間になってました。

っと、YouTubeを検索したら、トンネルができる前の旧道を(たぶんドローンで)空撮した動画が! いやー何でもありますねYouTube。いかに風光明媚な道路だったかわかります。まあ、こんなに海の近くだと、それこそ「ごんごん」音を立てるほど時化たらたちまち通行止めだったはず。

■函館本線(山線)の踏切。右に行くと動画を撮った砂浜(や鶴亀温泉)に、左に行くと左川ちかの生家(と林檎園)のあった登町に通じます。

■余市の市街地近くにある葡萄?畑。すいません、植物にはうといもので。。。

■ニッカウヰスキー余市醸造所でウイスキーとシードルを試飲し、観光客っぽく〆。

【追記】
このときの余市訪問をネタに、某所で書いた詩を上げておきます。

真っ白に輝く遠い山並みは
青空の表面にハイライトを入れ
薄茶の砂はゆるやかなドレープを描き
群青の海は白いレースをまとう

この誰もいない海岸に
限りなく広がるうつくしい方角を
身体は魚眼レンズのように
溢れても溢れても取り込み続けた

冬の北国の海といえども
いつも灰色に塗りつぶされているわけではなく
まぶしい光の日には
裸の樹木や海食崖さえも
隠されたテクスチャーを露わにする

天気予報の悪戯のせいで
当てが外れてしまったけれども
握りしめた切符に導かれたならば
あとは静かに向き合えばよい

こんなにも透き通った海と空に
ただ眼を閉じて身体をゆだねれば
魂の最後のひとしずくまで希釈されて
悼む言葉もないまま風に葬られる